健康ひとくちメモ3

ウォーキングしよう
やっかいな胸やけ
子宮頸がんの予防法
足腰衰え感じませんか
糖尿病の「遺産効果」とは
子どもの喘息(上)
子どもの喘息(下)
通便は正しい朝食から
もしかしてドライアイ?
お医者さんと禁煙しよう
認知症のお話
耳鳴りの話
のどの上手な見せ方
上手な医者のかかり方
野球肘のお話


ウオーキングしよう

 そろそろ野外での運動を始めましょう。運動には、心肺機能や筋力持久力増強が目的の「フィットネス(体力づくり)」と、その前段階として健康増進のための「ウエルネス(健康づくり)」があります。フィットネス目的でトレーニングに励むと負担が大きく、中断したり、体に障害をきたすこともあります。運動習慣のない方はウエルネスを目的とした運動から始めてください。
 体脂肪1キロに蓄えられたエネルギーは7200キロカロリーです。マラソン選手が42キロを2時間半で走ると約2400キロカロリーを消費、つまりマラソン1回で燃える脂肪は約300グラムです。1時間走れば、体重が1、2キロ減ることがありますが、ほとんどは汗による水分の減少です。
 脂肪消費のためには、身体活動の総量を増やすことが重要で、短い運動の繰り返しで十分な効果を期待できます。20分以上の継続が有効なのは、心肺機能の強化を目的とした場合です。時間が10分ぐらい空いたら意識して歩いて下さい。
 運動しなくても、日常生活の中で相当なエネルギーが消費されています。運動後、疲れてゴロゴロしていると日常生活でのエネルギー消費がかえって減少し、せっかく運動したのに総エネルギー消費はほとんど増えない、といった期待外れの結果になります。体力レベルが低い人は、軽い運動を繰り返しつつ、残りの時間を活動的に過ごすようにした方が有効です。
 体の負担が少なく、いつでもどこでもできる運動がウオーキングです。健康のためには1日に300キロカロリー運動量が必要で、歩数では約9000歩~10000歩です。普通に歩けば1分間に100歩、速歩では120~130歩、毎日1~2時間歩けばよい計算です。
 減量にはこの分の運動を追加します。週6日行えば1ヶ月後に1キロ減量ができるはずです。しかし、気を付けてください。運動後、缶ビール350ミリリットル(140キロカロリー)飲むと効果は半減します。            (相楽医師会 吉村医院 吉村陽)

(京都新聞 2010年2月18日)

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やっかいな胸やけ

思わず胸をさすりたくなるような胸やけ、苦い水がのどに上がってくる感じ、みぞおちの不愉快など、身に覚えのある方は結構多
いようです。これらの症状は胃の中の胃酸が食道に逆流してあがってくることがひとつの原因です。
 食道と同じ胃の境目にある胃酸の逆流を防ぐ本来の機能(横隔膜や下部食道括約筋など)が弱くなっていると胃酸の逆流が起こりやすくなります。食べ過ぎて胃の中が充満したり肥満やおなかのしめつけにより胃が圧迫されても、やはり胃酸が逆流しゃすくなります。胃はその内面が粘膜で覆われ、胃粘膜には食べ物や胃酸の刺激に負けないような防衛システムが発達していますが、食道の粘膜にはそのような防御システムがないので食道の下端がくりかえし胃酸にさらされると食道粘膜が次第にただれてしまい、逆流性食道炎という病気になります。
 この治療法は①生活改善②飲み薬 が一般的です。つまり食生活上、胃酸の分泌を増やす食品(甘いお菓子、さつまいも、香辛料、コーヒー、オレンジジュース、ビールなど)や脂肪の多い食品(天ぷら、ベーコンなど)を避ける(腹八分目以下に)
☞寝る前の食事は避ける【食後すぐ横にならない】
☞生活習慣上、肥満や便秘を改善する
☞おなかを締めつけたり前かがみでの作業を避ける
☞適度な運動をしたりストレスを解消する
☞禁煙
などです。
お薬は主に胃酸分泌を抑える薬が使われますが、それで効果不十分なときなどは胃の運動を改善する薬や消化を助ける薬も追加されます。
 やっかいな胸やけの原因はこの逆流性食道炎であることが多いのですが、中には悪性の病気が隠れていることもありますので、気になる方は一度かかりつけ医に相談されることをお勧めします。              (相楽医師会 山口医院 山口泰司)

                                                          (京都新聞 平成22年4月15日)

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子宮頸がんの予防法

  昨年末「子宮頸がん予防ワクチン」が日本で発売になりました。子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が
原因です。HPVはありふれたウイルスで100種類以上存在し、子宮頸がんの原因となるのは、その中の15種類ほどの
ハイリスク型です。感染経路のほとんどが性行為で、性行経験のある人の80%はハイリスク型のHPVに一度は感染すると
言われています。何らかの原因でHPVが持続感染すると、まず異形成(前がん状態)になります。
その状態から自然治癒することが多いのですが、ごく一部のケースでがんへ進行します。
 HPVに感染してからがんになるまでには数~数十年かかります。性交経験のある人なら誰でも誰でも子宮頸がんになる可能性があるわけです。
 「子宮頸がん予防ワクチン」はHPV16型と18型の感染を防ぐワクチンです。誤解を抱きやすいのですが、接種しても100%
子宮頸がんを予防できるわけではありません。感染を防ぐことのできない別の型のHPVもありますし、すでに感染している場合は効果がありません。
ワクチンの効果を最大限にするには、性行為を開始する前に接種することが重要です。
 子宮頸がん検診により40年前に比べ死亡率は大幅に低下しました。60~70歳代の患者数も減りましたが、いま問題なのは
20歳代後半から30歳代の患者数が増えていることです。この年代の検診受診率が低いからです。
症状がなくても1~2年に一度の検診を受けると、がんになる前に見つけることができます。
 検診の目的は死亡率を下げることにとどまらず、子宮を温存しその後も妊娠できるようにすることです。
子宮頸がんは「予防できるがん」と言われますが、ワクチンを接種してもがん検診を定期的に受けなければ子宮頸がんは予防できないのです。                                            (相楽医師会 下里医院 下里 千波)

                                                         【京都新聞 平成22年6月17日】

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足腰衰え感じませんか

 中高年になって足腰の衰えを感じている方はおられませんか。
 以下の7項目のうち一つでも当てはまるものがあれば、将来介護を必要とする状態になりやすく、要注意です。これを
『ロコモーティプシンドローム』といいます。

 1・片足で立って靴下が履けない。
 2・家の中でよくつまづく。
 3・階段で手すりがいる。
 4・横断歩道を青信号の間に渡りきれない。
 5・15分続けて歩けない。
 6・2キロ程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)を持ち帰れない。
 7・家のやや重い仕事(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)が困難である。

 足腰の衰えの原因は変形性膝関節症、腰部脊柱質狭窄症、骨粗鬆症等があり、中には病院で治療を要する方もありますが、
骨、筋肉、,関節など全体の機能低下が根底にある点は共通しています。
 思い当たる方には自宅でできる簡単な運動をお勧めしています。

 1・片手をテーブルにつけた状態で、左足を上げて右足で1分立つ。次は反対に左足で1分立つ。不安がある場合には両手を    テーブルについて行います。
 2・両足を軽く広げて立ち、両膝を少し曲げて伸ばす。ゆっくり5回繰り返す。不安があれば両手をついた状態で行います。
 
 どちらの運動もい1日3回行います。
 インターネットで『ロコモーティプシンドローム』を検索すると、図による解説もあり、とてもわかりやすいと思います。
 ご病気で運動が不向きな方は、前もって主治医の先生と相談して下さい。
 介護を必要とせず、いつまでも自分の足で歩いてより豊かな生活を送って下さい。

                                                       【京都新聞 平成22年8月19日】

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糖尿病の「遺産効果」とは


 糖尿病の合併症は近年爆発的に増加しています。これは、脂肪分の多い食事、運動不足などで糖尿病を発症する患者さんが
増えているものの初期には症状が乏しく、放置しがちだからです。
 糖尿病患者さんがより元気に長生きするためには、合併症を起こさないようにしないといけません。その答えが
レガシーエフェクト(遺産効果)という言葉があります。
 英国のUKPDSという研究で、糖尿病と診断されたら早期にしっかりと治療すると、その効果が長年にわたって持続するとことがわかりました。
 この研究は、糖尿病と診断されてから最初の10年間は、血糖コントロールを甘めに治療したグループと強力に治療したグループに分けて、
後の10年間は、両方とも同程度の血糖コントロールで治療し20年後を調べたところ、最初の時点で強力にコントロールした方が合併症の
発生が少なかったというものでした。
合併症とは、網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞などです。重要な点は、最初の10年は厳しめと甘めに分けたが、その後10年は
ほぼ同じ血糖コントロールをしたのに結果に差がでたという点です。
 また糖尿病とまではいかない高血圧糖や肥満の人でも、米国で行われたDPPという研究で、約3年間にわたり生活習慣改善を行った
高血糖の人は、そうでない人より糖尿病に移行する率が低く、この効果はその後10年近く続くことが、報告されてます。
 この研究の生活習慣改善というのは食事のエネルギーと脂肪の摂取量を減らし、週に少なくとも150分の運動を行うことです。
このように当初から強力に血糖を下げることで、糖尿病の合併症を減らし、糖尿病になることも減らすことができ、
かつその効果が長年にわたって続く、という結果が報告されました。  
 当初から治療効果が記憶されるという意味で、レガシーエフェクトと名付けられたのです。
                                                  (相楽医師会 松森内科医院 松森 篤史)

                                                    (京都新聞 平成22年10月21日)


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子どもの喘息(上)

 ある冷え込んだ朝、子どもが来院し、咳き込んでヒーヒーと苦しそうに座っています。早く吸入して発作を止めてあげなければとあせり、急いで聴診します。
梅雨時や秋、さらに台風が来る前にはこのような場面によく遭遇します。
 喘息の治療は進歩し、重症の患者でも吸入などの薬でコントロールできるようになりました。
しかし薬を気管支に直接作用させるので、量は少なく済みますが、痰が気管支にあると、薬が悪い気管支に行きません。
痰を上手に出してから吸入することが大事です。
 痰を出すには次の3つを練習して下さい。
 一つ目は腹式呼吸です。腹式呼吸は息を吐くことから始めてください。
口をすぼめて吐き、そのときおなかに手を当ててへこませて下さい。
次に吸うときは自然とおなかが膨らみます。これで腹式呼吸は完成です。
普段は意識して呼吸することはないのですが、意識して呼吸すると心も落ち着きます。
なかなか最初は難しいので患者さんには口をすぼめて5秒以上息をはく練習をしてもらっています。
 二つ目は水分を少しづつとることです。水分を摂る方が痰の切れがよくなります。お茶などでもかまいません。
 三つ目は胸を叩いて振動させることです。平手でたたくのではなく、手を丸くドーム状にして高頻度に叩きます。
胸に振動を与えることによって痰が動き、切れやすくなります。
 これら三つをマスターすることで軽い発作なら改善することもあり、患者本人の自信にもなります。
吸入の効果がパワーアップすることは間違いないでしょう
                                                  (相楽医師会 やました病院 山下 隆司)
                                                   
                                                    (京都新聞 平成22年12月16日)

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子どもの喘息(下)

 「子どもの喘息は治るんでしょうか?」と聞かれたら、
「がんばれば治りますよ」と答えるようにしています。
喘息を完全に治すには発作のない期間を5年以上つくりましょう。そうすれば子どもは成長とといもに気管支が太くなる上に、
発作予防を続ければ気管支の粘膜の腫れが改善するため呼吸は楽にでき、症状も出なくなります。
 喘息の本態は気道炎症と言われており、気管支の粘膜が腫れることにによって発作が出現します。
発作が起こるたびに治療するよりも発作を予防して粘膜が腫れないようにする方が重要です。
発作を予防するには薬も大事ですが、まずは発作が起こりにくい体をつくりましょう。
 そのためには次の三つが大事です。
 一つ目は早寝早起きし、規則正しい生活を送ることです。気管支は自律神経の影響を受けており、
朝は活動するための気管支が広がり、夜は寝るだけなので細くなる。そのため夜の方が発作が起こりやすくなります。
 二つ目は自律神経を鍛えることです。皮膚を鍛えることで自律神経の働きも強くなり、発作がおこりにくくなります。
できるだけ薄着や風呂上がりに水をかぶるなどをして自律神経を鍛えて下さい。
 三つ目は運動を続けることです。好きな運動でいいです。運動を続けている人の方が喘息の治りやすいこともよく経験します。
例えばきつい人にみられる運動誘発喘息の患児でも、マスクや準備運動、薬を使用しながら運動してもらっています。
(もちろん、発作が起これば休息を早く止めなければなりませんが…)
学校行事も積極的に参加し、生き生きとした生活を送ってほしいものです。 

                                                  (相楽医師会 やました病院 山下 隆司)
                                                   
                                                    (京都新聞 平成23年1月27日)


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通便は正しい朝食から


 便秘を気になる症状としてあげる人の割合は、国民生活基礎調査によると20歳代で2%、50歳代で4%、70歳代以上では10%と報告されており
頻度の高い病態です。女性は男性の倍ほど頻度が高くこれには女性ホルモン・腹圧の低さ・食事量の少なさ・排便環境などが関係しています。
 排便を起こす仕組みについて考えてみましょう。
食べ物が胃の中に入ってきてから胃が膨らむと、胃から大腸に信号が送られ、大腸が反射的に収縮し便を直腸に送り出そうとします。
この胃・結腸反射は、寝起きである朝食後に強く起こります。
 直腸の内容が150~200㍉㍑になると、排便反射によって便意がおこります。
そしてトイレに行って排便するぞという意思のもと、いきみと腹圧も手伝って排便することになります。
  このプロセスから、便通をよくするためには胃・結腸反射を起こさせるために規則正しく朝食を摂ること、
直腸内容を増やすために水分を十分に摂る・食物繊維の豊富な食べ物を心がけてること。
朝食後のトイレに行く習慣をつけ、トイレに行きたくなったら、我慢しないことも大切です。
また運動をして腹筋を鍛え、腹圧をかけやすくすることも大事です。
 下剤としては、便をやわらかくするものと、腸粘膜を刺激して蠕動運動を高進させるものがありますが、
いずれも少量から開始して少しずつ増やすことが肝心です。
しかしいずれも下剤は使用していると次第に効きが悪くなるため、食事療法や排便習慣の改善こそが大切です。
また、浣腸では正常な排便反射が損なわれることから、浣腸は便がどうしても出ない時の非常手段と考えて下さい。


                                                  (相楽医師会 小澤医院 小澤 勝)
                                                   
                                                    (京都新聞 平成23年3月17日)


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もしかしてドライアイ?



 眼科にはいろいろな症状の方が来院されます。視力が落ちた、目がゴロゴロする、まぶしい、視界がかすむ、目が重いなど多種多様です。
原因にはいろいろな病気がありますが、ドライアイと言う病気をご存じでしょうか。
その病名から「ただ目が乾くだけ」というイメージかもしれませんが、多様な症状を引き起こします。
 ドライアイは、目を守る役割をする涙の量が足りなくなったり、涙の性質のバランスが崩れたりすることによって、目の表面に傷が生じたりする病気です。
現代人は涙が減少傾向にあるとも言われておりますが、現代社会では涙を乾かす要因が多くあります。
 例えばエアコンの空調による室内の乾燥や、パソコンや携帯電話のモニター画面を見続ける事によるまばたきの減少が感想を引き起こします。
また、加齢やストレスに伴う涙量の減少や、コンタクトレンズの長時間・長期使用による涙の安定性の低下なども要因となります。
 ドライアイにより慢性の頭痛や肩こり、ひどい場合うつ症状になりますので、予防や悪化させないことが大切です。
室内が乾燥している時は化し月を使用してみたり、モニターを長時間見るときは意識的にまばたきを増やしてみましょ。
コンタクトレンズを使っている人は装用時間を短縮したり眼鏡にしましょう。
 治療としてヒアルロン酸の点眼で保湿することが多いですが、最近は涙の質をよくする点眼などもあります。
点眼で不十分な場合は涙点プラグという涙の排出口である涙点をふさぐ治療もあります。
適切な治療で今までの症状が改善して喜んでおられる方も多いので、前述のような症状が続くなら眼科受診をお勧めします。
ただ目が乾くだけでない、日々研究が進んでいるドライアイのお話でした。


                                                  (相楽医師会 安田眼科 安田 裕権)
                                                   
                                                    (京都新聞 平成23年5月19日)


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お医者さんと禁煙しよう◇


喫煙が肺がんを初めとする種々のがんの原因となることは皆さんご存じだと思います。
その他にも脳卒中、心筋梗塞、慢性気管支炎、歯周病、胃潰瘍、肌の老化などが喫煙と関連があるとされています。
体に悪いと分かっていながら禁煙できない方も多いのではないでしょうか。
 以前は禁煙できなのは意志の弱さが原因とされていましたが、
最近ではニコチンの持つ強い依存が原因とされています。
ニコチン依存症という病気であると認識されるようになったのです。
2006年4月からニコチン依存症の治療に医療保険が使えるようになりました。
 医療保険使える方にはいくつかの条件があります。
①直ちに禁煙しようと考えていること
②ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)でニコチン依存症と判定されていること
③ブリンクマン指数(1日喫煙本数×喫煙年数)が200以上であること
④喫煙治療を受ける事を文書により同意していること
以上の条件を満たせば医療保険を使い喫煙治療を受けることができます。
 治療の方法には以前から使用されているニコチンパッチやニコチンガムの他に、ニコチンを含まない飲み薬を
使用する方法があります。
ニコチンを含まない飲み薬はニコチン切れの症状を軽くするだけでなく、タバコをおいしいと感じにくくする効果も
併せて持っており、楽に喫煙することができます。
 標準的な禁煙治療プログラムでは、12周にわたり計5回の禁煙治療を行います。 費用は飲み薬を使用した場合、
3割負担の方で約1万9000円程度の負担です。
 禁煙すれば、健康面以外にも美容や金銭面、その他生活に関わる多くのメリットが得られます。
あなたも「お医者さんと禁煙」を始めてみませんか。



                                                  (相楽医師会 河村医院 河村 基)
 
                                                   (京都新聞 平成23年7月16日
 





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認知症のお話◇

 医療技術のめまぐるしい進歩により一貫して日本の高齢化が進んでいます。
いわゆる「団塊世代の世代」が65歳を迎える2010~2015年頃には高齢者人口は3000万人を突破するとみられています。
それに伴い認知症の高齢者は年々増え続け、新たな治療方法が見つからなければ
2020~2025年頃には300万人を突破するといった予測もあります。
 違和感のある物忘れが出てきたら認知症を疑いましょう。
認知症にはさまざまな原因疾患(過半数を占めるアルツハイマー型以外に、脳血管症、レビー小体型、ピック病、
慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症に起因するものなど)があります。
早めに発見すれば手術やお薬で治るものもありますので、積極的に医療機関を受診して原因をい調べてもらいましょう。
 国内では1999年にアルツハイマー病治療薬「アリセプト錠」が発売されましたが、
症状を改善するのの残念ながら病気そのものが治る薬ではありません。
 今年はアルツハイマー病治療にとって歴史的な年となりました。国内では12年ぶりに一気に3つの治療薬が発売されました。
パッチ製剤(胸や腕、背中に貼り付ける薬)の登場により、口から薬を飲むことが難しかった人にも治療が可能となりました。
 それでも病気そのものが治る薬はまだありません。アルツハイマー病の発症メカニズムも、まだ解明されていません。
製薬会社はこぞって新たな治療薬の開発競争に参戦しています。一方で、早い段階から治療を開始すれば
効果が得られる可能性が示唆され、治療薬の開発と並行して、早期診断法の開発も急ピッチで進んでいます。
今のところ最も有効なのは早期診断、早期治療です。
本人だけでなく、家族や周囲の気付きも大事です。少しでも異変に気が付いたら、早めに医療機関を受診しましょう。



                                                 (相楽医師会 島谷クリニック 島谷 英彦)

                                                    (京都新聞 平成23年9月17日)

耳鳴りの話◇


 耳鳴りは当然ではありますが病名ではなく症状です。
その病気の原因を明らかにして、まずは原因の病気を治療することが大切です。
 例えば急に鳴り出した耳鳴りの場合は突発性難聴が原因のこともあり、この場合は最初の2週間以内にどれだけ適切な
治療を受けられたかによりその後の症状の善しあしが大きく左右されます。
ですから急に鳴り出した耳鳴りの場合は、早急に近くの耳鼻咽喉科を受診されるのことをお勧めします。
 中耳炎や耳管狭窄症による耳鳴りのように、原因の病気が治れば耳鳴りも治ってしまうものもあります。
メニエール病・聴神経腫瘍などによる耳鳴りは、重大な疾患なので診断、治療そのものが重要です。
いずれにしても、まずは耳鼻咽喉科を受診することが必要です。
 耳鳴りには耳鼻咽喉科を受診しても、特に異常がない、あるいはそれ以上病状の改善の見込みがない内耳性難聴などが
原因のものもあり、お困りの方もおられると思います。
この場合は、耳鳴り治療を専門にされている耳鼻咽喉科を受診されることをお勧めします。
耳鳴り治療は主に薬を用いますが、1番大切なのは医師と一緒に治していこうという患者さんの協力です。
 例えば、過労・ストレス・睡眠不足は耳鳴りを悪化させるので体調管理が重要です。
また体の中には、普段意識することのない、注意しないと聞こえない「無意識の雑音」があります。
呼吸の音、脈の音、物を飲み込む音などです。耳鳴りが完全に消失してしまうのは理想です。
しかし、消えてなくならないまでも「無意識の雑音」の仲間にすることができたらどうでしょう。
普段は注意しないと聞こえなくなるので、苦にならなくなり治療成功と言えます。それには、患者さんの意識改革が必要かもしれません。

                                              (相楽医師会 ごとう耳鼻咽喉科 後藤 英一郎)

                                                  (京都新聞 平成23年11月19日)


のどの上手な見せ方◇

 冬のこの時期は、のどの痛みを訴えて来院される患者さんが多いようです。マスクを顎のところに下げたままでは、
顎や首のリンパ節が隠れて見えません。リンパ節の腫れで、がんが偶然見つかることもあります。
 患者さんのお話を聞きながら音質を聞いています。赤ちゃんの泣き声や息づかいを聞いています。
耳鼻科医は、ヘッドライトや顎帯鏡という凹レンズで患者さんの右後方にあるライトの光を集めて、のどの奥を明るく照らします。
 初めに中咽頭(喉の真ん中の部分)を見ます。下圧子というヘラのようなもので、舌を軽く押さえます。
患者さんは、大きな口を開けて、「アーッ」と繰り返して下さい。この時、舌を出すと舌に力が入るので、自然な位置にしておいて下さい。
これで、口蓋変扁桃や咽頭後壁(突き当たりの部分)の観察ができます。
 次に下咽頭(のどの下の部分、食道への入り口)と喉頭(気管への入り口)を見ます。
患者さんは、猫背になり顎を突き出して天井を見てください。舌引きガーゼで舌をつかみ引っ張りますが、舌を突き出して「エーッ」と繰り返して
言ってください。喉頭蓋が挙上して声帯が見えます。喉頭鏡という柄のついた小さな鏡を舌を下に向けて入れ、
鏡に映して観察します。
 さらに詳しく観察するために、鼻からファイバーを挿入することもあります。反射のきつい人、舌の出にくい人、のどの狭い人は、
非常に見えにくいので初めから使うこともあります。
以上のような段階を経て、どこに炎症があるのかをよく観察し細菌性かウィルス性かアレルギー性かを判断して薬を決めます。
緊張せず誘導に従って、上手にのどを診てもらいましょう。

                                        (相楽医師会 山本耳鼻咽喉科形成外科 山本 ゆき子)

                                              (京都新聞 平成24年1月21日)




上手な医者のかかり方◇

長年開業し、医師として患者さんと向き合っていると、診察ではコミュニケーションがいかに大事かわかってきます。
限られた時間の中で、それを達成しょうとするのはなかなか困難なことです。
上手に要領よく医者にかかれば、身体の異常が早く見つかり、診断治療がスムーズになります。
今回は医者にかかるちょっとしたコツについてお話します。
①伝えたい事はメモにして準備。
 医者の前では緊張されませんか。メモを見ながら医者と話をすることで要領よく症状を伝えられ、よりお互いの信頼感が深まると思います。
②対話の始まりは挨拶から
 医者の診察も基本的な挨拶からはじまります。よりよい人間関係を作って下さい。
③自覚症状と病歴はあなたを伝える大切な情報。
 具合が悪くなった時が病院への通い時です。「いつ」「なにを」「どうした」を念頭において話して下さい。
いろんな痛みや不調があると思いますが、もっとも気になっている症状から話し始めて下さい。思ったままに詳しく症状を伝えましょう。
医者の質問には簡単に答えてもらって結構です。
④これからの見通しを聞きましょう。
 診察後どのような検査や治療が必要か、治癒する病気か継続して服薬が必要かなど納得いくまで聞きましょう。
⑤その後の変化も伝える努力を。
 「よくなりました」「ひどくなりました」 どちらもたいせつなコミュニケーションです。
医者の勉強にもなりますし、医者もどうなったか気にしています。
⑥治療効果を上げるためお互いに理解し、よく相談し治療方法を決めましょう。
 質問は具体的な方が実際に役立つアドバイスを医者からもらえます。
ときには医者のちょっとした会話がガンを早期発見し、命を救うこともあります。ぜひ会話上手になって病院、医者を利用して
健康な生活をお送り下さい。

                                        (相楽医師会 あさの内科クリニック 浅野 裕之)

                                             (京都新聞 平成24年5月19日)


野球肘のお話◇


 野球肘には、繰り返しボールを投げることによって肘への負荷が過剰となり、肘の外側では骨同士がぶつかって骨や軟骨が剥がれた状態のものや肘の内側では靭帯や腱が伸ばされて損傷した状態のものがあります。
 その原因になると大きくわけてふたつあり、ひとつはいわゆる投げすぎです。一般的には小学生の1日に投球数は50球以内とし、1週間で200球が上限であり、変化球は投げないことです。また中学生でも1日の投球数は70球以内とし、1週間では350球以内とすることです。
 もうひとつの原因は投球フォームの問題です。投球動作では下半身からの回転エネルギーを上半身まで伝えるといった連動した一連の動作が必要なのですが、この動作がスムーズにいかないと、いわゆる手投げの状態になり肘に負荷がかかりやすくなってしまいます。
 簡単なチェックポイントでみますと、ワインドアップでみますと、ワインドアップの片脚起立で膝が一番高い位置に達した際に、体幹部が投げる方向と反対に傾いていることがあります。これは大腿部の裏の筋肉や股関節が硬い場合に見られ、投球の最初の段階で不安定にあります。
また投球終了時に体が投球方向を大きく越えて体勢を崩している場合では、投球動作時の体幹のひねりがうまくいっておらず、手投げになっていることがあります。
これは骨盤周囲の筋と肩甲骨周囲の筋の動きがうまく連動していない場合に見られ、やはりいわゆる体が硬い場合に多いです。
 実際に野球肘と診断がついた場合は、投球の中止と肘の安静が大切であり、痛みを我慢して続けていると悪化して、手術が必要になることもあります。
ですが大切なのは、その予防であり、そのためには年齢にあった投球数の上限をしっかり守ることと、柔軟性を身につけて正しい投球フォームを学んで投げるようにして下さい。


                                       (相楽医師会 山本整形外科 山本 浩二)

                                          (京都新聞 平成24年7月21日)